前回の記事では7月の新作開発秘話:第1話としてくり抜き2段弁当箱をお届けいたしました。
今日は 【おたま】 の特集になります。
まずお伝えしたい事は、弁当箱と同じく1枚板から作り出しているのですが、
大きな板材=太い木が必要になる訳です。
簡単な図にしてみます。
口の部分から矢印方向に素材を削って製品化しています。
もっと簡略化すると…
この矢印のように削り出す訳です。つまり…この四角サイズの木材が必要なんです。
もちろん無駄が出ないように…
横に何個も並ぶイメージで木を使っていきます。
図にすると分かりやすいですよね?
では、300年以上経過した原生林の破棄材、間伐材、環境保護目的の調査木材で太い木がどれだけ入手できるか…
ここが1番の未知数なんです。入った時に作る!これ以外にありません。現在はただでさえ木材入手が9割減少して
いますが、このおたまは昨年頭に入手した大木を使っています。煮沸後1年以上乾燥させて、やっと…製品化です!
ちなみに私が入社した7年前から、今日までで…なんと2度しか作れていないおたまなのですが、
デザイン線も、使いやすさを最大限に練り上げつつ、コーディネートの幅を広げる方向でまとめています。
まず、ディスプレイに使用してみた画像を再度ご覧ください。
これは女性スタッフ私物のダンスクと合わせてみたイメージ画像です。
次に下の画像は我が家の私物のル・クルーゼ。(注:おたまは旧モデルです)
どうでしょうか?凄く相性が良いと私たちは思っています。
これは別にダンスクやル・クルーゼに合う!というご提案ではなく
シンプルで美しい不変のデザインこそ、私たち工房の発祥技術である箱根細工の技術を使って再現したくて
だからこそ、例えば和食器とは真逆の北欧風にも合う→むしろ何にでも楽しめる!=コーディネート…無限大!
というシンプルで美しい木の食器の1つの楽しみ方を見て頂けたらという意図です。
※ル・クルーゼの方で使っているおたまは旧品で、少しだけデザイン線に変更があります。
木材を大きく使うというお話も書きましたので、ついでに研磨成形の仕方も公開しつつ、こだわっているデザイン線
のお話を続けたいと思います。見え方のデザインは上の写真にある様に、シンプルで美しい線を重視しています。
次に使いやすさ。長くご愛用頂く上で最重要課題ですね。
まず口の容量、そしてすくいやすさの形状改修です。
この口の部分は、研磨する際に深く削って内側に進んでいくイメージです。
上の写真は研磨型(丸い部分)です。ここに木材を押し付けて削っていきます。
口の部分を押し付けて、研磨成形するんですね。
この研磨の際に、旧品(ル・クルーゼと写っている型)よりも少しだけ深く削っています。容量を深さで取る仕様です。
その代わりに横幅を少しだけ狭くしました。なぜかというと、その方が鍋のサイズをより選ばないからですね。
そして深さに合わせて、口の外側の厚さも大きくとって耐衝撃性に強い仕様にしています。
次の写真は口以外の研磨シーンです。
この写真はスプーンを作っているシーンなのですが、まずはある程度の形状まで削り出すのに、
こういう大きな研磨機を使うんですね。その前には木に図面の線を引いていく作業もしています。
こういう1つ1つの工程…文字通り全て手作業です。
節や木目を見ながら、より耐久性の高い取り位置を探して研磨したり、
1つ1つに意味があって違いが出てきますが、原則として形状に関しては
なるべく誤差が出ないようにて加工で研磨成形していくんです。
※主さは同じ形状での物凄く個体差が出ます。木の取り位置で繊維質の量が違うからです。
今回は、持ち手部分の研磨で旧品に比べて、カーブをゆるめにしています。
ダンスクとル・クルーゼに合わせているおたま、それぞれの柄を比較してみてください。
ダンスクの方のおたまが、柄はカーブがゆるいですよね?
この仕様変更はお好みが分かれる部分(正解が無い部分)と感じています。
お使い頂く方の手の大きさで持ちやすさが変わるからです。
今回の方がより手の大きさを選ばないのですが、旧品はカーブがピッタリの方には超しっくりくる
という仕様なんです。つまり今回はより万人向けに規格変更した形です。
今回も力が入ってしまう記事でした。
本当に細かい箇所ばかりなのですが、実は毎日使う物って使用感が凄く大切ですよね?
デザインに振り過ぎで使用感台無しな物も多いですが、不変の、本物の美しさを今後も追及していきます。
お読み頂けて、本当に有難うございます!
次回はこのままの流れで調理器具の 【しゃもじ】 か 【へら】 を特集したいと思います!!
【今回登場したTB食器】