前回記事で木地加工をご紹介致しました。
今回は木地加工後の無垢の食器に塗装を施していく工程です。
1.次は本番塗装前の目止めという工程です。
目止めとは繊維質の穴を埋めて耐水性を高めるための工程で、純粋漆と瓦土という焼しめて殺菌した土を塗り込んでいきます。
匂いの主な原因になる、この目止め。しかし永くご愛用頂く上でとても大切な工程です。
純粋漆を繊維の穴に埋め込んでいきますので、完成品を初めてご使用頂いた際には、漆の濃縮された匂いが解き放たれます。
この匂いを脱臭する方法も古来からの風習として残っていますので、別の記事でご紹介致します。
2.目止めのあとは水で研磨して余分な漆と瓦土を洗浄します。
1つ1つ、勿論すべて手作業で研磨していきます。
3.水研磨後は再度、天然乾燥をします。
木目に漆の天然色素が美しく入り込む表情が見えます。(画像:目止め後の本塗り前)
自然な木目が際立つ、漆目止めのみの表情がこのお椀たちです。木本来の色とりどりの表情に、ウルシ色の木目が加わっています。
4.最後に本塗りです。
表面塗膜となる漆は、濾過を何度も繰り返し、余計な水分を飛ばして純度を高めていきます。素黒目漆と言います。
アジア圏の原生林で採取したまさに天然の漆を、かき混ぜて水分を蒸発させます。
そして出来上がった漆がこちらです。
5.塗装後にも天然乾燥を施します。
形状により乾燥させる置き方も工夫が必要です。画像はスプーンの乾燥風景。
持ち手の部分を塗って乾燥→口の部分を塗って乾燥という2段階の塗りを施しています。
塗装を乾かす専用棚
最適な硬度として、目止めの後はこの本塗を6回繰り返しての重ね塗りを行います。
このように一切の化学物質を使わず自然素材が持つ特性を活かし全て手作りで食器を作っています。
全ての工程が完了するまで平均で1年半前後かかります。
化学塗料や化学薬品処理を行わない伝統的な製法の漆器からは、天然漆の自然な香りがします。
どうしても漆の香りが気になる方に向けた伝統の脱臭法を記事にてご紹介いたしました。
自然の香りは自然物の力で脱臭をするとても雅な文化的風習のご紹介でもあります。