前回の記事では7月の新作開発秘話:第2話としておたま特集をお届けいたしました。
前回の記事から時間が開いてしまい…申し訳ございませんでした。
製作管理でバタバタしっぱなしでした…。
8月上旬までには新作全ての特集記事を公開していきます。
早速本題の、しゃもじとへらのこだわりPOINT!
まず素材である木が栗の木であるという事が大きなポイントになります。
従来品も一貫して、しゃもじやへら(旧称:ターナー)類は栗の木での製作が多かったです。
上の写真は2012年に製作していた、しゃもじ/へら/おたま2種です。おたま以外は全て栗の木で作っています。
※今年の新製品は全てウルシ色で仕上げています。上の製品は2012年版の色です。
栗の木というと…昔は電信柱、線路の枕木、水車の素材、家の土台等々に使用されてきた素材なんです。
どうです?どの用途も耐水性を含め耐久性が高くないと意味をなさない用途ですよね。
ではなぜ栗の木は耐久性が高い素材と言えるのでしょうか?それは繊維の密度が高いからなんです。
製作現場において、この繊維質の密度の高さを体感する事ができます。
おたまの製作記事でも掲載していた工程なのですが、こちらの写真をご覧ください。
1番目の写真が、まず荒く削って形を作っているシーンです。
2番目が製品の形状に細かく研磨しているシーンです。
この研磨の工程で、例えばお椀等に使用しているナツメの木と比較すると…
研磨成形の工程に平均して約8倍の時間がかかります。それだけ密度が高いんです。
そして密度が高いだけでは、硬くて割れやすい&折れやすい素材になってしまう可能性も
あるのですが、栗の木は繊維に粘りがあるため、よく撓る(しなる)んですね。この点も重要で
折れにくい=調理器具に非常に適した木と言えます。もちろん密度が高い分だけ耐水性も
耐久性も優れます。
ここで1つ疑問が発生しているかもしれませんね。
栗の木が調理器具に適しているのは上に書いた通りです。
これだけ優れた素材なら…なんで他の製品も栗の木にしないの??という疑問。
これが自然の面白さなんです。万能の素材って原則無いんです。
栗の木は確かに食器や調理器具に適した素晴らしい素材です。
でも野生の栗の木…あまり太い木が入手できないんですね。手に入ったらラッキーです。
つまり大型の器や、前回特集したおたまを栗の木で作るのが難しい訳です。木が細いから。
耐久性や耐水性で栗の木は非常に優れていますが、体積の大きな器や弁当箱やおたまの
ような製品は、太く育ちやすいナツメの木とかで作ってきたという訳ですね。継ぎ接ぎをしない
という厳格な製作ルールもあり、天然の木の特徴を活かした製品作りをしています。
次に形状について書いていきたいと思います。
形状に関しては、従来品と全く変更をしていません。
旧称:しゃもじ大 → 新製品:しゃもじ
旧称:ターナー → 新製品:へら
という感じです。なぜ変更しなかったかというと、現時点までで取扱店さん一覧にあるような
料理教室さんや外食さん、そしてご愛用を頂いてきた皆様のお声から、非常にご評価が高く
変更点が見当たらなかったんです。それだけTB社内での完成度が高いロングセラーと認識
しています。お使い頂けると、その使いやす差をご納得頂けると思います。
変更点は塗装です。ウルシ色のみで製作しています。あと贋作防止用にロゴを入れています。
特に栗素材はタンニンといって渋を自生しやすいんですね。
これは木が自ら抗菌作用を発揮し続けているのですが、ホルムアルデヒド等の化学処理をしていないために
より顕著に渋の自生を見て頂けます。その作用が主要因で色に変化が現れます。
自然の木が発揮するエイジング効果が本当に美しいので、その点も是非楽しんで頂きたいPOINT!です。
→エイジング見本の過去記事はこちらから(下の写真はタンニンで色調が変化した状態です。)
※上の製品は旧品で色変化の実験をした見本になります。色バリエーションではありません。
今回もお伝えしたい事があり過ぎて既に長文化していますが…最後にこのタンニンが自生する事により
ご使用環境によっては、例えばしゃもじを炊きたてのご飯に入れっぱなし等にしておくと、ご飯が茶色くなる事があります。
これがタンニンです。もちろん毒性は無いですし、何より木自体が抗菌作用を発揮している証なんですね。
特に調理器具は、その用途や使用頻度から溶出度も高くなりがちです。だからこそ、オススメしたい製品たちです。
今回の記事もお読み頂けて有難うございます。次回も新製品の特集をしていきたいと思います!
【今回登場したTB食器】