前回の記事で、楓の木を使った自然の白と漂白の白を比較しました。
木本来の色や質感と言えば、無垢です。つまり無塗装になります。
でもTOMATO畑では、ある理由から無塗装製品を一切製作していないんです。
ここで毎度恒例、専門企業としてあらゆる疑問にお答えしていくQ&Aコンテンツ。
Q.なぜ何も塗らない無垢で販売しないの?
かなり頻繁にご質問頂きます。せっかくなので記事に残します。
まず見出しの写真をご覧下さい。
ニンジンジュースに、前回登場した自然の白いスプーンと、目止めも含めて何も塗っていないスプーンの原型を浸しました。
引き上げるとどうなるでしょうか…?
自然の白いスプーン(左)は目止めをしていますので、この位では色移りしません。
でも目止めも含めて何も塗っていない無垢(右)だと、どうでしょうか…。
染みています。
とても分かりやすい実験ですね。
繊維質の穴に水分が浸透しています。
この水分が腐食やカビの原因になり得ます。
さらには例えばこのニンジンジュースに含まれるカロチンは、自然の顔料(ペンキのような)として作用して
使うたびに色素が沈着していきます。
例えば無垢の状態で販売した場合、上の作用をどのように防ぐかというと、
ご使用毎に蜜蝋を塗り込む。
植物由来のオイルを塗り込む。(オリーブオイル等)
などなどが挙げられます。
自分で仕上げる感じね!とワクワクしてくれた方は、すでに木の食器がとてもお好きな方です。
もしくは例えば革靴もきちんとお手入れして等々、手をかけてエイジングを楽しんで頂ける方です。
しかし子育てや家事に忙しい主婦の皆様だったら?
食器洗いのあと、乾かして毎回オイルで仕上げ…られませんよね??
TOMATO畑では、「安全な木の食器を普及価格で」という目的で活動してきました。
安全であるからこそ、まず毎日使える食器。毎日使っても手がかからない、つまり
自然乾燥で腐食やカビが発生しにくい製作に挑んできたんです。
製作工程だけでの安全であれば、無塗装が一番簡単です。塗料を吟味しなくて良いからです。
しかしご家庭で毎日使ってもらう事を前提にした上での安全を追求してきたからこそ、塗装しているんです。
ほんの一例になりますが、今はもう入手困難なTOMATO畑製のまな板。
これですら無塗装ではありません。
TOMATO畑が溶出度から検証している食用ウレタン塗料を、
ひと塗り→研磨して繊維の穴に残す→自然由来の植物油で拭く→松の脂で洗浄→自然乾燥
という工程で目止めしています。
こちらの深皿も現在は入手困難な製品ですが、同じように一見して無垢に見えますかね。
実は目止めから本塗りまでしています。
同様の製品を多数研究し、開発してきました。
無垢に見えて実は塗装している、キナリ色のくり抜き2段弁当箱(左)とかですね。
これらは試作品で終了してしまったり、限定数しか作れずに完売してしまったり等の製品群ですが、
ここでまとめとしてQ&AのAnswerを。
Q.なぜ何も塗らない無垢で販売しないの?
A.無垢の安全の方が製作はラク!
でも日用食器の安全普及が何より大切だから塗装しています。
ちなみに長年の研究で、上にあるようなキナリ色系のままだと食品に含まれる色素沈着が目立つため
近年の定番製品のキナリ色系は全て、野生の梔子(クチナシ)から採取した黄色をちょっぴり調合して本塗りしています。
あくまでもTOMATO畑が重視してきたのは、ご家庭での安全という訳です。