大変お待たせ致しました。切立オーバル皿、いれこマグ大、欠品しておりました2品の発売を再開致しました。当記事では、漆塗りの魅力の一つである色差について特集致します。ご購入前に必ずお読み下さいませ。
漆塗りの魅力の一つ:切立オーバル皿の色差
いれこマグ大については、前回までの製作品と特に大きな色差ございません。しかし掲載の写真通り、切立オーバル皿については、大きな色差がございます。実はこの色差も漆塗りの魅力の一つです。
1.形状がロクロで回転して塗れる製品ではないため
ロクロで回転させながら漆を塗り重ねていける形状の場合、色差が発生しにくいと言えます。しかし切立オーバル皿はその形状から、全てを手磨きにて漆塗装を施しており、木地のきめ(木目)細かさにより、漆の色濃度沈着に大きな変化が発生致します。※豆知識:きめ細かいの語源は、木目が細かいに由来する説がございます。今回のタモの木はとてもきめ細かいため、このような色濃度となって完成しております。樹木は1つとして同じ木がございません。自然の個性を美しむ文化こそ、漆芸文化の魅力の一つです。
ロクロで塗れる器類/ロクロで塗れないお皿類
※製作中に分かりやすい画像を撮影し忘れてしまったため、旧品の塗り途中写真で説明致しております。
2.漆は湿度が高いと硬化速度が増すため
塗装の硬度が早い段階で出るのは、適度な湿度が発生する時期になります。この度は乾燥期に漆塗装を施したため、適切な硬度に達するまでじっくりと乾かし、そしてまた塗装をし、前回までと同様に漆を6回重ね塗りしております。乾燥期に仕上げる漆器はより色濃度が高くなる傾向にあります。乾燥に時間を要し、色素沈着率が上がるためです。※豆知識:いつの時期に製作しても、ご家庭用途での耐久性を出すために、このように乾燥時間等も綿密に調整して仕上げていくのが職人技術になります。
※漆を塗ったら漆室(うるしむろ)で乾燥させて、また塗装を繰り返します。
3.退光現象により前回までの色と同じような色感になります
素黒目漆を拭き漆という技法で塗装していく、古来からの塗り方にはより顕著な特徴が現れます。退光現象です。百聞は一見に如かず。以下の画像をご覧下さい。
上の画像は、内閣府認定公益社団法人・色彩検定協会さんの教科書にもご掲載頂いた漆の色変化見本です。ヘラはこのような色変化をエイジングとしてお楽しみ頂けますが、切立オーバル皿は、新品の濃い色から、漆の透明度が増していくため、長くご愛用を頂きますと、冒頭の色見本の左側のように色が薄くなっていきます。詳細は以下の過去記事をご覧頂けると漆芸文化の魅力に触れて頂けるかもしれません。
以上、漆芸文化の魅力の一つである色差、自然の個性を美しむ多様性を知って頂きたく、特に今回の切立オーバル皿にはその個性を顕著にみる事が出来ますので、特別に久しぶりの製作系記事を公開してみました。